2023年09月09日(土)第3回講座「農山村の祈り・まつり」

渋沢さんレク

今回は、山里ひとなる塾の前身である豊森なりわい塾を運営する豊森実行委員会の実行委員長を長年務め、豊森の神髄を築き上げてきた渋沢寿一さんを講師にお迎えし、『農山村の祈り・まつり』をテーマにお話いただきました。

豊田市の山村地域では、9月から10月にかけて、稲作の収穫期を迎えるこの時期に、各集落で秋の大祭が行われます。塾生たちはそれぞれ、お世話になっている集落の大祭に参加させていただくのですが、その前に、是非とも渋沢さんのお話を聴いてもらいたいと企画した第3回講座です。

豊田自分史2023

 

 

渋沢さんについては塾生に事前にご案内しているとはいえ、初めて出逢う渋沢さんの人柄や経歴についてはとてもお伝えしきれません。なので、今回は自己紹介から始めていただきました。

農と農業
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自己紹介、だなんて軽い表現ではあたらないでしょう。

学生運動全盛期、「論破すれば社会が変わる」と思っていた頭でっかちの学生だった渋沢さんが、「自分の食べ物は自分で作れるのが生きる基本」と気づき、満州開拓団が引き揚げ入植した栃木県の千振集落の農と、パラグアイの大規模農業とを見てきた経験から、「農」と「農業」は正反対の概念だと気づいていったお話。

ハウステンボスを企画運営する一方で、水俣で見てきたもの。社会の凄まじい変化に並行した、渋沢さんの人生のお話でした。

誰一人置き去りにしない

 

いま話題の中古車販売業者の経営体質、アイドル事務所の問題も、根底の問題は同じかもしれない。GDPを向上させるための経済的価値観。効率主義。競争社会。果たしてその先に、「だれも置き去りにしない持続可能な社会」はあるのか。

DoよりBe

太陽が暮れてはのぼり、四季がめぐる「循環する時間」に、人の営みを合わせていくこと。自然の中で必要最低限のモノを持ち、共感・共生すること。

「すべての生命は多様でありながら、ひとつに繋がっている」

渋沢さんの午前のレクチャーを聴き、塾生はどっしりと腹に落ちてくるものがあったのではないでしょうか。

今回の会場は、足助地区にある豊田森林組合さんをお借りしました。希望者は近くの香嵐渓にある kitchen&cafe nobana  さんの特製弁当を美味しくいただきました。

弁当
農耕民族の祈り・まつり

午後からは記録映像を鑑賞しました。

 

 

今と昔のくらし

鑑賞につづいて、渋沢さんのお話はいいよ『集落の祈り・まつり』に入ります。

現在のくらしはお金でモノを買いますが、ほんの60年前までは、エネルギー、食べ物、くらしの殆どを山や自然の恵みや自らの労働で賄ってきた。その事実に改めて驚かされます。

生きるすべてを山から調達
山の恵み2
山の恵み

地球の生命体はみな、太陽エネルギーを直接ないしは間接的に取り入れて生きている。

自然や山は、くらしと命につながるものであったと同時に、思わぬ災害ももたらすものであった。

それに手を合わせる、祈ることは感謝の行為であった。

自分の身体=自分を生かす環境。

自然の中で一貫して自分の役割を全うすることが、生きることであった。

祭りは社会教育の場

まつりはその集落で生きていくためのしきたりを学ぶ、社会教育の場であった。

まつりを通して、自分の感覚を研ぎ澄ますことを学ぶ。

自然の中で朝日を拝み、風を読み、今日の水田の水位を決められる―

そんな身体感覚を養うことに繋がっていた。

共有林
掟と共感

 

自然と向き合って生きるのは、容易なことではない。

 

23の広葉樹の共有林を持ち、毎年ひとつの森を皆伐し、集落一年分のエネルギーとなる木材を得る。23年かけて萌芽更新していく間に、ワラビが採れ、キノコが採れ、小動物が獲れる。村の戸数に合わせた栗林をもち、冷害の年にひとりの餓死者も出さなかった集落の話。

 

厳しい生活環境に合わせ、集落が養える人数を知り、それを守った集落では、母親が自分自身を赦し、集落でお互いがお互いを赦し合ってきたという話に触れ、今の法律では裁くことなど到底できない「共に生きる」ための掟に、塾生は真剣に聴き入りました。

この景色に

この景色の向こうに見えるものはなんでしょうか。

祈りやまつりを通して、集落がめんめんと受け継いできたものを感じることができたでしょうか。

「だれひとり置き去りにしない社会」を、持続可能な社会を作るのは、経済効率や偏差値ではなく、「愛、優しさ、赦し」ではないか。それをこそ、取り戻さなければいけないのではないか。

渋沢さん、長い時間にわたり、渾身のレクチャーをありがとうございました!

 

グループトーク③
グループトーク①
グループトーク②
感想共有(牛尾)
感想共有(葉子)
感想共有(加藤)
感想共有(渋・戸・田)

 

渋沢さんのぐぐっと胸に迫るレクチャーをお聴きし、塾生はグループで感想を共有しました。

1日でとても受け止められないほどの情報量をいただいた塾生ですが、きっと社会を見る目、集落を見る目、まつりを感じる感性を、また一段と深めることができたのではないでしょうか。

是非、今後の集落行事へ参加の際には、今の価値観や、目に見えるものだけではない、集落の営みを感じていただけたらと思います。

 

塾生のみなさんが渋沢さんと関われる貴重な機会、今回は休館中のあすけ里山ユースホステルを特別に開けていただいて、懇親会と合宿も実施しました。

懇親会には渋沢さんが長年関わってきた「あすけ聞き書き隊」の皆さんや、真庭なりわい塾の吉野さんもご一緒いただき、持ち寄った旨い酒を夜遅くまで酌み交わす、充実の時間となりました。

懇親会

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